フィリピンでアメリカ軍を追い詰め、マレー半島とシンガポールを想像以上の速さで攻略した日本軍は、当初の目的であった南方資源の獲得の最重要目標である蘭印(らんいん、オランダ領東インド=ほぼ現在のインドネシアに相当)への本格的侵攻を始めました。
また、イギリス軍の駆逐を目指しインド洋へ進出したほか、中国軍に対する連合国軍の支援を断ち切るためのビルマ攻略作戦も相次いで実施しました。
蘭印攻略作戦
オランダ領東インド(ほぼ現在のインドネシアに相当)は、石油や軍事・産業に欠かせない多くの金属を産出するため、資源の乏しい日本は何としてもこの地域を確保しなければいけませんでした。
ボルネオ島に対しては1月月10日から行動を開始、ほぼ1ヶ月で島の要所の占領を終えました。
次いでジャワ島に進行しました。この島は石油資源はそれほど出ませんでしたが、オランダ総督府が置かれていたバタビア(現在のジャカルタ)があり、蘭印攻略の中心とされました。
3月1日に攻略が始まり、わずか1週間後に蘭印軍は降伏しました。
兵力は日本5万5千に対し蘭印軍は約8万人であり、蘭印軍の方が多かったのですが、オランダ本国はドイツに既に占領されており、援軍が来る見込みはなく、戦意は旺盛ではありませんでした。
緑:タラカン(蘭印攻略作戦で日本軍が最初に攻撃を行った地点。1/10攻撃開始、1/12占領)
青:首都バタビア(現在のジャカルタ。3月1日に沖合で海戦が行われる)
赤:パレンバン(大油田のある地域。2月14日-15日に落下傘(らっかさん)部隊による攻撃で制圧)
紫:スラバヤ(2月27日に沖合で海戦が行われる)
黒:バリ(2月19日~20日にかけて沖合で海戦が行われる)
この地域では日本軍と連合国軍の間で度々海戦も起こりました。
主な海戦の場所は2月19日~20日バリ島沖、2月27日スラバヤ沖、3月1日バタビア沖、です。
これら一連の海戦を通じ、日本軍はこの地域の連合国軍の海軍力をほぼ一掃し、東南アジアの制海権(せいかいけん)※を手中に収めました。
※制海権…戦時における交戦全海域または一部海域の軍事的支配権。その確立により敵艦船の航行が不可能になり、味方艦船の航行の自由が保障される。従来は戦勝のための必要な条件であったが、近来航空機の発達により制海権を得るためには制空権の獲得が必要となった。(出典:コトバンク/百科事典マイペディア)
インド洋作戦
マレー沖海戦により戦艦を失い、さらにシンガポールが陥落したため、イギリス東洋艦隊はインドの南に浮かぶセイロン島に残りの戦力を移動していました。
東南アジアの制圧を終えた日本海軍は、イギリス東洋艦隊を壊滅させ、インド洋の制海権を得ようとします。
インド洋に進出した日本軍機動部隊は、1942(昭和17)年4月5日、セイロン島コロンボ港を空襲し、イギリス重巡洋艦2隻を撃沈。
6日、イギリス輸送船21隻を撃沈。さらに9日、イギリス軍の小型空母「ハーミス」を撃沈しました。
この一連の攻撃により、イギリス東洋艦隊の戦力はさらに小さくなり、アフリカ東岸沖に浮かぶマダガスカル島へ根拠地を移動させました。
ビルマ攻略作戦
1942(昭和17)年1月20日、中国軍に対する連合国の支援ルート※を遮断するため、当時イギリスの植民地だったビルマ(現在のミャンマー)に日本軍は侵攻しました。
ビルマ南部から侵攻した日本軍は、3月7日首都ラングーンを制圧後、北上し、各地の連合軍を駆逐しました。
5月8日北部のミイトキーナという町を抑え、連合国軍をビルマから完全に追放しました。
ビルマに関しては、日本軍は1940(昭和15)年よりビルマの独立運動をする勢力を支援し、戦闘指揮官の育成を行っていました。
そしてビルマ攻略に際し、彼ら(ビルマ独立義勇軍)を率いていったため、ビルマの人々は当初日本軍を歓迎しました。
※中国軍に対する連合国の支援ルート…1937年から始まっていた日中戦争において、イギリス・アメリカを中心とする連合国は、蒋介石の国民党軍に物資を送り、援助していました。蒋介石を援助するということで、この物資輸送ルートは「援蒋(えんしょう)ルート」と呼ばれていました。日本軍は援蒋ルートを遮断すれば、中国軍は日本に降伏するだろうと考えていました。
青:バタビア(現在のジャカルタ。蘭印攻略作戦。3月1日に沖合で海戦が行われる)
緑:セイロン島コロンボ(インド洋作戦。4月5日日本軍空襲)
紫:マダガスカル(インド洋作戦を受けてイギリス東洋艦隊が退避)
赤:ラングーン(ビルマ攻略作戦。ビルマ(現在のミャンマー)の首都。3月8日日本軍占領)
紺:ミイトキーナ(ミッチーナー。5月8日占領)
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本項はオールカラーでわかりやすい!太平洋戦争を元に構成しました。
photo:Wikipedia, public domain
アイキャッチ画像:インド洋作戦に向かう日本機動部隊