【概要】日本海軍の部隊構成と階級―「連合艦隊」とは

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日本海軍はどのような組織で戦ったのでしょうか。ここでは部隊構成の基礎と、海軍軍人の階級について概要を見ていきます。

軍艦とは

日本海軍で「軍艦」とは、「戦艦」「巡洋艦」(じゅんようかん)「航空母艦」(空母=くうぼ)「水上機母艦」(すいじょうきぼかん)「潜水母艦(せんすいぼかん)」「敷設艦」(ふせつかん)などのことを言います(1945年時)。

「駆逐艦」(くちくかん)「潜水艦」(せんすいかん)などは軍艦ではありませんでした。

軍艦の艦首(かんしゅ=艦の先端部分)には天皇家の菊の紋章があります。軍艦ではない船も含めて、海軍の船をまとめて「艦艇」(かんてい)と呼びます。

 

艦隊と連合艦隊

2隻以上の軍艦が1人の指揮官に指揮されるとき、「艦隊」(かんたい)と呼びました。艦隊の単位は「個」です。2個以上の艦隊を1人の指揮官で指揮するとき、「連合艦隊」と呼びました。連合艦隊司令長官は、日本海軍の主要艦艇をほとんど指揮下に入れました。

連合艦隊
真珠湾攻撃を成功させた山本五十六連合艦隊司令長官

 

艦艇の種類

海軍で用いられていた戦闘用艦艇は、大きさや積んでいる大砲のサイズによって名称が異なり、大きい順に代表的なもので「戦艦」「巡洋艦」(重巡洋艦・軽巡洋艦)「駆逐艦」などがありました。

また、その他に「航空母艦」(空母)や「潜水艦」などが代表的な艦種です。

戦艦

戦艦は海軍艦艇のうち最大クラスの軍艦で、太平洋戦争開戦時、排水量(はいすいりょう)※13万トン以上で口径(こうけい)※236センチ以上の主砲(しゅほう=その艦で一番大きい大砲)を備えていました。

※1 排水量…船の重量
※2 口径…大砲の砲身の内側の直径(=砲弾の直径)

太平洋戦争が始まるまで、海の戦いでは、敵の軍艦をなるべく遠くから砲撃(ほうげき=大砲で攻撃すること)し、ダメージを与えることが大事であると考えられていました。

そのためには、飛距離の出る大きな大砲を備えた軍艦が必要です。大きな大砲は大変重いので、それを支えるためには艦のサイズが大きくないといけません。

したがって、きな大なを積む「大艦巨砲主義」(たいかんきょほうしゅぎ)という考え方が、世界の海軍関係者の間では主流の考えでした。

大艦巨砲主義
戦艦大和。世界最大の口径46センチの砲を9門備えていた。砲弾は最大で41㎞先まで飛んだ。

 

それを崩したのは日本海軍で、真珠湾攻撃やその後のマレー沖海戦で航空機による攻撃を展開し、アメリカ・イギリスの戦艦を次々に沈めました。

航空機と空母の発達した太平洋戦争では、もはや巨大な戦艦の活躍の場は限られていました。

巡洋艦

巡洋艦は「重巡洋艦」(じゅうじゅんようかん/重巡)と「軽巡洋艦」(けいじゅんようかん/軽巡)に分けられます。その境目は主砲に20センチ砲(口径20センチの砲)を搭載できるかどうかでした。また、重さは重巡洋艦が1万トン前後、軽巡洋艦が5000トン前後です。

巡洋艦は戦艦より小ぶりな砲しかなかったため攻撃力は劣りますが、速度が比較的出るため、戦艦よりも小回りが利くことが利点でした。

重巡洋艦
重巡洋艦「摩耶」(まや)

駆逐艦

駆逐艦は戦艦・巡洋艦と比べると大分小ぶりで、細長くできている分、速力が65㎞/時~70㎞/時ほども出せました。

主要兵器は「魚雷」(ぎょらい=魚型水雷。敵艦に向け発射し命中させる)であり、防御兵器としては「機雷」(きらい=機械水雷。敵艦が侵入してきそうな海面に浮遊させ、当たると爆発する)がありました。駆逐艦編成の部隊を「水雷(すいらい)戦隊」と呼んでいました。

 

航空母艦(空母)

第一次世界大戦以降、飛行機の戦場での利用はどんどん進んでいきましたが、飛行機といえども移動距離には限界があります。そこで、船の上に滑走路を設け、海上から飛行機を離発着できるようにしたのが「空母」(くうぼ)です。

空母
空母「大鳳」

空母には20機~80機ほどの戦闘機・攻撃機等を収容でき、必要に応じて発進させることができました。

潜水艦

「潜水艦」(せんすいかん)は、海中深くに沈みながら進む(潜航(せんこう))ことのできる艦艇です。主な武器は魚雷で、敵の艦艇に忍び寄り、魚雷攻撃で撃沈させることを期待されていました。

日本海軍の潜水艦は「一等潜水艦」と「二等潜水艦」に大きく分けられていました。一等潜水艦はすべて「伊号」(いごう)に分類され、二等潜水艦は「呂号」(ろごう)「波号」(はごう)に分類されました。これは「いろはにほへと」の「い」「ろ」「は」です。

この区別は潜っていない状態の基準排水量によって分けられていました。

伊号潜水艦…1,000トン以上

呂号潜水艦…500トン以上1,000トン未満

波号潜水艦…500トン未満

太平洋戦争開戦時、日本海軍には63隻の潜水艦があり、戦時中に119隻が新たに建造されました。

潜水艦
伊号第10潜水艦(甲型)(194217年4月頃/出典:日本海軍艦艇写真集 潜水艦・潜水母艦)

 

艦上機

太平洋戦争では、飛行機は陸軍でも海軍でも主要な戦力の一つでした。しかし海軍は陸軍とは違い、空母で飛行機を運用する必要があったことから、「艦(空母)の上で運用する飛行機」という意味で「艦上機」(かんじょうき)という種類の飛行機を次々に開発していきました。

艦上機は空母に搭載されているものを指すとき、「艦載機」(かんさいき)と呼ばれます。

艦上機の特徴は、スペースの限られる空母に多数搭載できるように、また、限られた長さの滑走路でも離着陸できるように、比較的小型のものが多いという点です。

特に爆撃機は、陸上で離発着するものはエンジンを2基以上搭載しているものが数多くありましたが、艦上機はエンジンはすべて1基です。また、翼が折りたためるようになっているものもあります。

零式艦上戦闘機
真珠湾攻撃で離陸準備中の零式艦上戦闘機(ゼロ戦)

 

日本海軍の戦闘用艦上機の種別は大きく分けて「艦上戦闘機」「艦上爆撃機」「艦上攻撃機」の3種類がありました。それぞれの用途は以下の通りです。

艦上戦闘機…通常の戦闘機と同じく、味方爆撃機の護衛として、敵の戦闘機を撃墜する。また、敵爆撃機を迎撃する。略称は「艦戦」(かんせん)。

艦上爆撃機…敵艦上空から急降下しながら爆弾を投下し、甲板(かんぱん)や艦の構造物を破壊する。爆弾だけでは敵艦を沈没させることは難しいが、戦闘能力を奪うことができる。略称は「艦爆」(かんばく)。

艦上攻撃機…水平に飛行しながら敵艦に向け爆弾を投下したり、魚雷を敵艦に向け投下して命中させる。魚雷は敵艦の水面下を破壊することができるので、浸水によって沈没させやすい。略称は艦攻(かんこう)。

空母艦載機による攻撃の仕方
空母艦載機による攻撃の仕方

 

太平洋戦争開戦時の連合艦隊の編制

日清戦争で初めて組織されて以来、連合艦隊はたびたび増強されていきました。以下は太平洋戦争開戦時の陣容ですが、この頃には空母機動艦隊(第一航空艦隊)、基地航空艦隊(第十一航空艦隊)、潜水艦専門艦隊(第六艦隊)ありで、水上・水中・空中の立体的な戦闘に対応する組織となっていました。

第一艦隊

戦艦中心の艦隊。日露戦争時の日本海海戦のような、アメリカ艦隊との決戦に備えた主力艦隊です。

【配備艦艇】全戦艦10隻中8隻を集中。開戦後に戦艦「大和」「武蔵」が完成し、編入されました。他に重巡洋艦4隻、駆逐艦32隻。

 

第二艦隊

重巡洋艦中心の艦隊。

【配備艦艇】重巡洋艦保有18隻のうち13隻を集中。他に駆逐艦32隻。

 

第三艦隊

初期の南方攻略作戦を目的とした艦隊。

【配備艦艇】重巡洋艦1隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦8隻、潜水艦4隻。

 

第四艦隊

トラック島に根拠地をおき、内南洋(日本の委任統治領内)の防衛に当たりました。

【配備艦艇】軽巡洋艦3隻、駆逐艦8隻、小型潜水艦12隻。

 

第五艦隊

アリューシャン方面の哨戒(しょうかい=艦艇や飛行機で見張りをすること)が任務。

【配備艦艇】軽巡洋艦2隻が主力。

 

第六艦隊

【配備艦艇】潜水艦30隻を集中。

 

第一航空艦隊

機動部隊の中核。

【配備艦艇・航空機】主力空母6隻と小型空母1隻を集中。搭載機数約500機。

 

第十一航空艦隊

空母はもたず、基地航空隊を集中。

【配備航空機】九六式陸上攻撃機・一式陸上攻撃機約250機、零戦(零式艦上戦闘機)約200機。

 

南遣(なんけん)艦隊

仏印(フランス領インドシナ)方面(現在のベトナム沿岸)の警備担当。

【配備艦艇】水上機母艦2隻、潜水艦14隻など。

 

 

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