【文部省訓令】学生生徒ノ風紀振粛ニ関スル件(原文)

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1906年に発表された文部省の訓令。日露戦争後の社会の不安を抑え、学生・生徒が国家目標から逸脱しないように、教育関係者に秩序を乱す諸要因をあらかじめ取り除くよう呼びかけています。特に社会主義に対し強い警戒を示しています。

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学生生徒ノ風紀振粛ニ関スル件(明治三十九年六月九日文部省訓令第一号)

 学生生徒ノ本分ハ常ニ健全ナル思想ヲ有シ確実ナル目的ヲ持シ刻苦精励他日ノ大成ヲ期スルニ在ルハ固ヨリ言ヲ俟タス殊ニ戦後ノ国家ハ将来ノ国民ニ期待スル所益々多ク今日ノ学生生徒タル者ハ其ノ責任一層ノ重キヲ加ヘタルヲ以テ各々学業ヲ励ミ一意専心其ノ目的ヲ完ウスルノ覚悟ナカルヘカラス

 然ルニ近来青年女子ノ間ニ往々意気銷沈シ風紀頽廃セル傾向アルヲ見ルハ本大臣ノ憂慮ニ堪ヘサル所ナリ現ニ修学中ノ者ニシテ或ハ小成ニ安シ奢侈ニ流レ或ハ空想ニ煩悶シテ処世ノ本務ヲ閑却スルモノアリ甚シキハ放縦浮靡ニシテ操行ヲ紊リ恬トシテ恥チサル者ナキニアラス斯ノ如キハ家庭ノ監督其ノ方ヲ誤リ学校ノ規律漸ク弛緩セルノ致ス所ニシテ今ニ於テ厳ニ戒慎ヲ加フルニアラスンハ禍害ノ及フ所実ニ測リ知ルヘカラス

 社会一部ノ風潮漸ク軽薄ニ流レムトスルノ兆アルニ際シ青年子女ニ対スル誘惑ハ日ニ益々多キヲ加ヘムトス就中近時発刊ノ文書図画ヲ見ルニ或ハ危激ノ言論ヲ掲ケ或ハ厭世ノ思想ヲ説キ或ハ陋劣ノ情態ヲ描キ教育上有害ニシテ断シテ取ルヘカラサルモノ尠シトセス故ニ学生生徒ノ閲読スル図書ハ其ノ内容ヲ精査シ有益ト認ムルモノハ之ヲ勧奨スルト共ニ苟モ不良ノ結果ヲ生スヘキ虞アルモノハ学校ノ内外ヲ問ハス厳ニ之ヲ禁遏スルノ方法ヲ取ラサルヘカラス

 又頃者極端ナル社会主義ヲ鼓吹スルモノ往々各所ニ出没シ種々ノ手段ニ依リ教員生徒等ヲ誑惑セムトスル者アリト聞ク若シ夫レ斯ノ如クシテ建国ノ大本ヲ藐視シ杜会ノ秩序ヲ紊乱スルカ如キ危険ノ思想教育界ニ伝播シ我教育ノ根抵ヲ動カスニ至ルコトアラハ国家将来ノ為メ最モ寒心スヘキナリ事ニ教育ニ当ル者宜シク留意戒心シテ矯激ノ僻見ヲ斥ケ流毒ヲ未然ニ防クノ用意ナカルヘカラス

 本大臣ハ国運ニ照シ時弊ニ鑑ミ特ニ茲ニ訓示ス教育ノ当局者及ヒ学校長教員等ハ克ク本大臣ノ旨ヲ体シ父兄保護者ト協心戮力シテ風紀ヲ振粛シ元気ヲ作興スルニ努メ学生生徒ハ自ラ修メ己ニ克チ学業ヲ成就スルニ専ニシテ上下胥ヒ率ヰ以テ教育ノ効果ヲ完ウセムコトヲ期スヘシ

 

出典:文部科学省ホームページ 学生生徒ノ風紀振粛ニ関スル件(明治三十九年六月九日文部省訓令第一号)

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